Masuk大陸間戦争と呼ばれる対戦が世界を恐怖に包み込んでいた。 その大戦を治めたと語りつがれている8賢者という人物達。 大戦後にはそれぞれが散り行き、そして国を興すものが現れる。 物語の舞台となるドラバニア王国。 その大戦を終決させたとされる8賢者の内2人が興した国、 国の成り立ちに関わったとされる一族には代々、広大な土地と辺境伯相当の子爵位、そして『紅い髪色に赤い眼』が受け継がれてきた。 ロイド・アイザック。 伝統と格式あるその一族に生まれた、一人の男の子。 優秀な『護り手』を輩出する家の嫡子として教育されすくすく育っていく彼だが、何も特徴が無く自分は能力が平凡であり、いたって『普通』でしかないと自覚していた。
Lihat lebih banyak父さんとガルバン様がドランの町を出て王都へと向かい早3カ月が過ぎようとしていた。アスティが王都へと旅立ち、その後にメイリン様とソアラ様も王都経由で領地に戻って行ったのだけど、その後から一切の連絡が途絶える。 間違いなく何かあったとは思うのだけど、こちらから使いの物を出しても、王都からは『しばし待て』という体のいい返事しか返ってこない。 同時に僕が受け持つはずだったヨームの説明会の話も、説明会をして欲しいという話が有っただけで、父さん達が王都へと言ってからは全く話が無い。「これは……何かあったわね……」 家族そろって食後のお茶を飲んでいると、ぽつり呟く母さんの声が聞こえる。「お父さん何かあったの?」 母さんの独り言が聞こえてのは僕だけじゃなかったらしく、隣りで一緒にお茶を飲んでいたフィリアが僕と母さんの顔を交互に見ながら、不安そうな顔をして誰にともなく疑問を口にした。「え? あ、ごめんねフィリア。何でもないのよ」「でも……」「心配いらないわよ。いらっしゃい。もうすぐ……もうすぐ帰って来るわ」「……うん……」 僕の隣にいたフィリアを呼んで、ギュッとその実を抱き寄せる母さん。その顔はとても大丈夫とは言えない程に、暗く沈んだ表情をしていた。――何かあったのは間違いないな。でも僕には何もできない。父さん……無事でいて……。 抱き合う二人を見ながら僕は心の中で祈っていた。 あまり不安になっていてもやらなければいけない事は待っては
「お父様!!」「うむ、皆まで言うなアスティ!!」「では!?」「わしが王家に直々に話を付けに行く!!」 馬っと立ちあがるガルバン様。「ちょっと待てガルバン」「む? 何故だ? こういうのは急いで――」「俺も一緒に行くからだよ」「なに?」 歩いていこうとするガルバン様に声を掛ける父さん。そしてにこりとしながらガルバン様を引き留める。――あ、父さんも怒ってる? こういう表情をする時の父さんを何度か見たことが有る。表情は違えど内心では凄く怒っている時に見せる顔。「ロイド」「はい!!」「急がせて悪いが、すぐにヨームの概要や利用の仕方と、それを利用する時のいいところ、悪いところを書き出してくれるか?」「今からですか?」「うん? そうだ、今からだ。時間がかかるというのなら、フレックが戻ってきたら手伝わせる。なるべく早く仕上げてくれ」「わかったよ。じゃぁ今から始めるね」 僕は席を立ち、その場を後にしようと歩き出す。「ロイド!!」「アスティ……どうしたの?」 少し離れたところまで進むと、声を掛けながらアスティが近づいてきて僕の横へと並ぶ。「私も手伝うからがんばりましょう!!」「ありがとう。それじゃぁ一緒に頑張って早く仕上げようね」「うん!!」 フンス!! というように気合を入れるアスティ。その頭を気づかずに撫でていた。すぐに真っ赤になるアスティがわたわたとし始める。「さ、さぁいそぎゅまちょ!!」「クスクス……そうだね」 慌てて言葉が噛みか
フレックが持ってきた封書は2通あった。一つは父さん宛ての物で、もう一つはガルバン様宛の物。 現物を渡された二人は困惑したようでいて、とても嫌そうな表情をしていた。 僕の記憶の中では、こうして王家から直接封書が届くという事は滅多にない。このところ数十年と他国との争いは起こっていないので、戦などが有るわけじゃないから、緊急招集的なものではないのが分る。そもそも緊急招集の場合は王家からの封書は黒く塗り染められたものを送付するという事に決められているそうなので、二人が手にしている真っ白な封書を見ただけでも違いは判る。 では他に何が思い当たるのかというと、僕にはこれといったものが見当たらない。そもそも王家から直接封書が来るということ自体が稀である。 事実、受け取った二人がどうしたものかという様な表情をしているので、その特異性が伺えるというモノだ。 意を決したように二人で頷きあい、同時に封書を解いてその中身を読み始める。「なっ!!」「むっ!?」 父さんは本当に驚いたような声を出し、ガルバン様は少し怒ったような声を出した。「フレック!!」「アラン!!」「「はっ!!」」 スッと名前を呼ばれてすぐにそばに来る執事の二人。――え? すごっ!! いつの間に側にいたんだろう……? フレックとの付き合いは長いから、いつもの気安さや仕事時の真面目さを知っているけど、ガルバン様の執事であるアランさんもフレックまで行かずとも同じように最近では良く話をしたり見かけたりしている。 ただ、こうして真面目な二人の更に『真剣な仕事』の時に取る行動の速さには驚く。――やっぱりすごいなぁ
「――というのが、このヨームと呼ばれるものの使用法らしいのです」「ほう……」「?」 俺と父上はボルドーの説明を聞いていたが、父上は聞くたびに頷いたり質問したりしていた。一通りの説明が終わったと同時に感嘆の声を出す父上。 しかし俺はあまり説明の意味が分からなかった。――この板に書かれた数字だけのものが、そんなに感心する事か? 父上の様子を見ながら俺はそんな事を考えていた。「なるほどな……。確かに時と金銭に貪欲な商人たちで有るのなら、このヨームとやらが有るのは便利ではあるな」「そうでございますね」「どうだシュターク、これを今後使えそうか?」「実際の所かなり有用だと思われます。正式に採用なされるのでしたら、国内で一緒に活用なされることが肝要かと」「ふむ。では今後はこのヨームを使用していく事を念頭に正式な書面としておいてくれ。それとこのヨームを使う事をアイザック領に確認を取ってくれ。何か褒美を出さねばならん」「かしこまりました」 父上の言葉を聞いてすぐにボルドーはスッと手を上げると、近くにいた執事が近づいてきて紙を渡す。 渡された紙にスラスラと今の会話を書き起こし、書面化していくボルドー。「で、これを考えついたモノの名前は分かっているのか?」「はい」 ボルドーが書面化している時にも父上からし質問が飛ぶ。「誰だ? 商人の誰かか? このようなものが考えられるのだからかなりの大物なのだろうな」「いえ、それが……」 父上の質問に言いよどむボルドー。
屋敷に着いた時はメイドの人達がワタワタしていた。それはそうなるだろうと思う。何しろ僕らが歩く後ろにウルフの群れとベアーの親子が付いて来てるのを目撃し、更にこれから屋敷の敷地の中で一緒に生活するというのだから、その準備などに動き回らなきゃならないわけで。 当たり前だけど、野生のウルフやベアーに出会ったとしたら、町で生活している人や魔法を使えない人達からしたら、それが1頭しかいなかったとしても命の危機に変わりはない。 それなのに僕らの後ろには数十頭
僕は今、アイザック家の馬車の中にいてドランの町から少し離れたところまで移動している。目の前には父さんとガルバン様がいて、僕の横にはアスティが当たり前のように座っていてニコニコとして居る。 父さんやガルバン様とお話しをしてから3日後の事、僕の提案を実行するにはまずは土地が必要という事で、ドランの町からほど近く、更に水場もあって耕しやすいところという事を優先に探していた所、丁度いい場所が見つかったというので、何故か僕まで同行してその場所を見に行く事になった。
アイザック家が新年を迎える準備のため、屋敷周りを雪かきし始めた頃――。 アルスター家でも新年を迎える準備が進められていた。ただし、例年と同じように家族とだけ過ごすというよな、静かに楽しく過ごせるようなものではなく、国の中央から来ている騎士団や魔術師団という大勢の方々を迎え、盛大に新年を迎える為のモノであった。――今年は静かに過ごせそうもないわね。 私は屋敷の自室で、外を眺めながらため息をついた。
男の人の後ろへと隠れてしまった女の子。 その様子を、ため息をつきながらもどこか温かい目で見つめる様子を見て、僕はこの人達もとても仲がいい家族なんだと思った。 首位の様子を伺いようやく少し落ち着いたのか、三人揃って僕たちの方へと近付いてくる。それを一歩前に出た父さんが迎えた。「良くいらっしゃいました。ようこそアイザック領へ。このような遠いところまで来ていただき感謝いたします。アルスター