無自覚に無茶しながらのスローライフ ~え? 付いていきますよ?~

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last updateDernière mise à jour : 2026-02-03
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 大陸間戦争と呼ばれる対戦が世界を恐怖に包み込んでいた。    その大戦を治めたと語りつがれている8賢者という人物達。  大戦後にはそれぞれが散り行き、そして国を興すものが現れる。    物語の舞台となるドラバニア王国。  その大戦を終決させたとされる8賢者の内2人が興した国、  国の成り立ちに関わったとされる一族には代々、広大な土地と辺境伯相当の子爵位、そして『紅い髪色に赤い眼』が受け継がれてきた。  ロイド・アイザック。  伝統と格式あるその一族に生まれた、一人の男の子。  優秀な『護り手』を輩出する家の嫡子として教育されすくすく育っていく彼だが、何も特徴が無く自分は能力が平凡であり、いたって『普通』でしかないと自覚していた。

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Chapitre 1

第1話 暢気な少年

 いつものようにベッドの上で目覚めて、そこから少しだけ|微睡《まどろ》んで待つ。ちょっとだけまた眠りに入ろうかとする瞬間に、まるで狙ったかのようにドアがコンコンコンと3度ノックされる。

 そのままノックをした者が何も言わずにスッと部屋の中まで入ってくると、足音も立てずに僕の眠るベッドの脇まで近寄ってきて――。

「おはようございます坊ちゃん。もう朝ですから起きてくださいね」

 いうが早いか、頭まですっぽりと被っていたふわふわで温かな布団をガバッ!! と引きはがされてしまった。

「寒いから返して……」

「いいえ。そこまで起きているのなら起きてくださいませ」

「えぇ~」

「えぇ~ではありませんよ。まったく……リフィア様はもう起きていらっしゃいますよ? お兄様のロイド様がそんな事では……」

「そんな事では?」

 僕はしっかりとした表情をしながらも、視線を言って本人へ向ける。

「……失礼しました」

 僕の視線を感じて、表情を変えることなく深く一礼をする。『しまった!!』という想いを表に出さないのは、さすが長年メイド長をしているコルマだと感心してしまう。

「ごめんね。別に深い意味はないんだよ」

「わかっております。こちらこそ大変失礼しました」

「じゃぁ起きるからお願いしてもいいかな?」

「かしこまりました」

 またも一礼をしてから、てきぱきと動き出したコルマの姿を見ながら、僕は大きくため息をついた。

 このようなやり取りが毎日のように続いている。

 僕の名前はロイド。ドラバニア王国という国の中の貴族の一つである『アイザック家』に生まれた。今年で7歳になるのだけど、今のところ一応は後継者と言われている。

 ドラバニア王国とは、今から数千年前に起こった大陸間戦争において、その大陸間戦争を終結に導いた8人の賢者により、僕らの住む大陸に興った国の一つと言われている。

 まだ勉学が開始されて間もない僕だけど、大体の家の人はこの事を初めに習うらしい。この事が国の起源にしてすべての始まりと、忘れたくても忘れられない位、本当に聞き飽きるくらいに教え込まれる。

 8人の賢者によって国が興ったと習うのだけど、実際には僕らの住む大陸には国は7つしかない。賢者の2人が結婚して土地に住み着き、そこに人々が多く住み着くようになって興ったのがドラバニア王国。その初代が賢者の一人で、そのお妃様も賢者の一人という事。

――とはいっても、他の国に行ったことが無いからなぁ……。

 鏡に映し出される自分の姿を見ながら、またしても深いため息が漏れた。

 国の貴族の一つである我がアイザック家なのだけど、その起源的には初代国王様と共に、新たに土地を切り開いたり、耕したりを共にしてきた仲間の中の一人で、村から町へ、街から都市へ、そして都市も大きくなって国になった時、その功績を称えて貴族として取り立てられ、土地を貰って根付いて生き抜いて来たのが現在の僕に繋がっているという訳。

 因みに爵位は伯爵家相当の子爵家。相当とはどういうことかというと、土地的なものが関係しているらしく、ご先祖様が頂いた土地が広かったらしく、でも功績が有るからといっても知り合いという手前、あまり位を高くし過ぎるとは難関を買う恐れがあるという配慮もあって、そんな微妙な立場となっているらしい。

 そして忘れてはならないのが、アイザック家を象徴するものの存在。

 土地や建物を代々受け継いできたという事は当たり前なのだけど、初代様から受け継いだのはそれだけじゃない。

 ドラバニアのアイザック家といえば? と国民に問いかければ必ず返ってくる返答。それが『紅髪に紅眼』という言葉。

 実際にドラバニア王国内には多種それぞれの人たちが住んでいる。獣人族であったり、魔人族であったり、それこそ魔族と呼ばれるような人たちもいる。他にも会った事が無いだけでどれほどの種族の人が住んでいるのかは分からない。

 これも初代国王陛下ご夫妻の『万民平等政策』が引き繋がれてきたから。そのおかげで、国に人々が増え、大国の一つと言われるだけの大きさになったのだとは思う。

 それでも唯一国内にはいないのが、この『紅い髪と紅い眼を持つ一族』なのだ。

――ただねぇ……。

 僕はその事にちょっとした恨みが有ったりするのだけど、その事を他人に行ったりした事は無い。だって誰かに行っても仕方ない事だと知っているから。だからこそ、その事を考えるだけで大きなため息が出てしまう。

「坊ちゃん支度が出来ましたよ」

「あ、ありがとうコルマ」

「いえ……では、皆様もうお待ちになられていると思いますので、急ぎましょうか」

「そうだね」

 起こしに来て身支度まで手伝ってくれたコルマにお礼を言って、一人で使うにはあまりにも大きすぎる自室から出て行く。

 皆が待っているというのはその言葉通りで、アイザック家の方針として朝食は出来る限り家族一緒に取る事と決まっている。

 用事がない限りは皆が集まるのが当然なのだ。だから僕もみんなが既に待っているであろうダイニングへと向かう。

「遅くなりました。おはようございます」

「おはようロイド」

「おはよう!!」

 家族だけが使うにしてはこれまた大きすぎるダイニングに、ドアを開けて入っていくと、先に来ていた母であるリリアがにっこりと笑顔を向けて挨拶を返してくれる。母さんは元伯爵令嬢で、金髪碧眼でほっそりとした体躯に色白で小さな顔をした美人さんだ。

 母さんの次に元気よく挨拶をしてくれたのが父であるマクサス。容姿に関しては言わなくても分かると思うけど、紅い髪色に紅い眼はもちろんの事。現在は土地を護ることに従事する傍らで、国の防衛を担う将軍の一人として名高い――らしい。

体格はいかにもという感じに筋肉隆々かと思われるのだが、実はそんな事は無く、見た目は何処にでもいる30歳代後半の優しそうなおじさん。ただし戦闘になるとスイッチが入り、かなりの剛腕だと聞いている。

 見たことが無いから良く分からないというのが本音。この父を見ていると、この両親を見ていると、本当に自分は二人の子なのかと疑う事が有る。

 ただ、その疑いは全くお門違いなのだ。この二人、今でも凄くラブラブ。国内でも凄く有名らしい。だから二人の間に割って入ろうとする人もいない。

 実際にそんな二人の甘々な所を見てしまった事は数知れず。その度に『仲がいいな』と思っている。

「お兄ちゃんおそいよ!!」

「ごめんフィリア」

 考え事をしながら自分のいつもの席へと向かうと、隣の席にすでに着席して待っていた妹から、かわいいお叱りの言葉を受けた。

フィリアは僕の2歳年下。つまり今年5歳になったところである。しかし5歳になったばかりだというのに、既に多くの貴族から婚約者候補にどうかと打診が来ているらしい。

フィリアは母リリアに似て色白で、小さな顔をした本当にかわいらしい見た目をしている。だから人気なのもうなずけるのだけど、人気なのはそれだけが理由じゃない。

このフィリアもまた『紅い髪色で赤い眼』を持つ、アイザック家特徴を色濃く継いでいるからなのだ。

 本当ならば7歳になる僕にもそういう話がきていてもおかしくないのだが、僕の場合は少しばかり事情が違う。

 僕は――。

『黒髪に黒目』の容姿をしているから。

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第1話 暢気な少年
 いつものようにベッドの上で目覚めて、そこから少しだけ|微睡《まどろ》んで待つ。ちょっとだけまた眠りに入ろうかとする瞬間に、まるで狙ったかのようにドアがコンコンコンと3度ノックされる。 そのままノックをした者が何も言わずにスッと部屋の中まで入ってくると、足音も立てずに僕の眠るベッドの脇まで近寄ってきて――。「おはようございます坊ちゃん。もう朝ですから起きてくださいね」 いうが早いか、頭まですっぽりと被っていたふわふわで温かな布団をガバッ!! と引きはがされてしまった。「寒いから返して……」「いいえ。そこまで起きているのなら起きてくださいませ」「えぇ~」「えぇ~ではありませんよ。まったく……リフィア様はもう起きていらっしゃいますよ? お兄様のロイド様がそんな事では……」「そんな事では?」 僕はしっかりとした表情をしながらも、視線を言って本人へ向ける。「……失礼しました」 僕の視線を感じて、表情を変えることなく深く一礼をする。『しまった!!』という想いを表に出さないのは、さすが長年メイド長をしているコルマだと感心してしまう。「ごめんね。別に深い意味はないんだよ」「わかっております。こちらこそ大変失礼しました」「じゃぁ起きるからお願いしてもいいかな?」「かしこまりました」 またも一礼をしてから、てきぱきと動き出したコルマの姿を見ながら、僕は大きくため息をついた。 このようなやり取りが毎日のように続いている。 僕の名前はロイド。ドラバニア王国という国の中の貴族の一つである『アイザック家』に生まれた。今年で7歳になるのだけど、今のところ一応は後継者と言われている。  ドラバニア王国とは、今から数千年前に起こった大陸間戦争において、その大陸間戦争を終結に導いた8人の賢者により、僕らの住む大陸に興った国の一つと言われている。 まだ勉学が開始されて間もない僕だけど、大体の家の人はこの事を初めに習うらしい。この事が国の起源にしてすべての始まりと、忘れたくても忘れられない位、本当に聞き飽きるくらいに教え込まれる。 8人の賢者によって国が興ったと習うのだけど、実際には僕らの住む大陸には国は7つしかない。賢者の2人が結婚して土地に住み着き、そこに人々が多く住み着くようになって興ったのがドラバニア王国。その初代が賢者の一人で、そのお妃様も賢者の一
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第2話 第2話 黒髪に黒目の代償
僕は――。『黒髪に黒目』の容姿をしているから。  つまりは他の貴族家からは『本当にアイザック家の人間か?』なんて事を思われているという証。 それはこのアイザック家に使えてくれている使用人や、メイド、そして領兵の人たちまで、同じ様な疑いを持っている人はいる事でも証明できると思う。 だからこそ表には出さないけれど、長年使えてくれているメイド長のコルマまでが、僕に対してあのような事を口走ってしまう事でも分かる。 皆がどう思っているのかは、僕自身が良くわかっている。ただそれを表立って出さないだけ。 それに父さんや母さんが本当に僕の事を愛してくれていると感じるからこそ、そのような雑音にも何もにせずに居られる。フィリアにしてもまったくにした様子もなく、僕の事を心から慕ってくれているし、僕が仮に『アイザック家』とは関係のない人間だったとしても、これから先も気にはしないで生きていけると思っている。――さて……考えるのはよして、ご飯を食べようかな。 まだ少しプリプリとしているフィリアをなだめながら、目の前でイチャつく両親に苦笑いしつつ、目の前に用意された食事を、作ってくれた人たちに感謝しながら口の中へと混んでいった。 子供とはいえ、食事をした後はお勉強の時間が待っている。貴族社会にて生き残っていくためにというのも有るけど、このドラバニア王国内という事に関して言えば、アイザック家という名前に何処か期待している節が視られる。 代々の先祖様方が偉大だったという事も有るのだけど、現当主である父さんの評価も高いので、次世代の当主と目されている僕にももちろん期待が掛かっているとはひしひしと感じる。――そんな事は僕にはどうでもいいんだけどね。ただ自分の大切な人達と仲良く、楽しく暮らしていければそれだけでいいんだ。 実のところ僕は、アイザック家当主という響きと、その名誉にはあまり興味がない。いや着る事ならばそのような立場になる事を回避したいとも思っている。――僕の事は僕が一番知っているさ。 そう思いながらも、自室の中で大きな机に向かい、参考にしている本とにらめっこしている。 僕の直ぐ脇には教師として、アイザック家執事のフレックがずっと立って僕の様子を見つめている。だから逃げ出すことはできない。「坊ちゃん分からない所でもありますか?」「フレック」「なにか?」「
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第3話 どんな子なの?
 テッサが父さんのいる執務室に入り、用事を終えて退出した頃を見計らい、僕は自室を出て無駄に長い廊下を歩いていく。 アルスター家と我が家であるアイザック家とは、実のところそんなに交流が無い。ドラバニア王国国内で行われるイベントなどで顔を合わせたら話す程度の仲だと父さんからは聞いたことが有る。 しかもこちらは伯爵家相当だとしても、向こうは紛れもない伯爵家であるのだ。向こうから何かお願いという名の命令が来ることは有っても、こちらからお願いできる立場にはない。 それが今回一番厄介な所。――いったい何の用なんだろ? 廊下をとぼとぼと歩きながら大きなため息をついた。 因みにドラバニア王国の爵位は最上位に公爵位があり、この爵位を叙爵出来るのは、王家の血縁の方々だけと決まっている。その下に侯爵、辺境伯、伯爵があり、そのまた下に我がアイザック家の子爵位、その下の男爵、騎士爵と続く。 実はこの下にも準騎士爵というのも有るのだけれど、この準騎士爵位は長年軍などで貢献した、それまで貴族としては爵位を持たなかった者が名誉職として叙爵される事が慣例となっている事が多く、その他にも商家として大きな貢献が認められた時など、平民とされている人たちへも贈られることが有るのが特徴だ。 ただし、名誉職と同じ扱いなので、正式な貴族というわけではない。なので、はき違えた人たちが今までも数多く罰せられてきたという歴史もある。そしてもう一つ。この準騎士爵から騎士爵へ上がれるかというと、現状では『無理』だと言われている。 そもそも貴族と平民とでは、視えない差が大きく開いているのだ。と、まぁそんな爵位の差から、今回訪問の予約という名の命令の難しさを実感したところで、父さんがいる執務室の前へとたどり着いた。 ドアをノックする前にもう一つ大きなため息を吐く。コンコンコン「ロイドです。入っても良いですか?」「入れ!!」「お仕事中に失礼します」 父さんの返事を聞いてから、静かにドアを開け、一礼して声を掛けた。「そんなにかしこまらなくていい。こっちに来て座りなさい」「はい」 言われるままに移動すると、それまで自分の執務机の前で書類を眺めていた父さんも、その書類を手にしたまま僕と同じように移動して、来客用のソファーの上に座る。 父さんが座ってから、僕も父さんと対面になる様にしてソファー
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第4話 すぐの方がいいかもね
   「ロイドと同じ歳の子なら、確か名前はアスティ嬢だったはずだ」「そうそう!! アスティ嬢だ!!」 父さんが思い出す前にフレックが答えを出してくれた。 「どんな子?」 今度は父さんではなく、直接フレックに聞いてみる。ちょっと父さんがいじけたような顔をしたけど気にしない。 「アスティ嬢は……。その前にロイド」「なに?」「アルスター家ってどういう家柄か知っているか?」「ううん知らない」  僕は左右に頭を振りながら答える。  はぁ~っと大きなため息が二人から聞こえてくる。 「アルスター家は、アイザック家とは少し時期は違うが古くから有る名門だ。そしてアルスター家は代々にして優秀な魔術師を出している家でもある」「魔術師?」「さすがに魔術師は分かるだろ?」「さすがに知ってるよ」 僕があまり優秀じゃないにしても、その位は知っている。だからちょっとだけフレックの言った事にムッとした。 「すまん。しかしそこが大事でな。アルスター家も代々優秀な魔術師を出している事で、それ以上の力を持つことを危険視されて、爵位はずっと据え置かれている。どれだけ戦争などで活躍しても爵位はそのまま。領地は多少変えられて来たらしいが、今の場所へと移ってからは既に数百年経ってるはずだ」「へぇ~」「へぇ~って……」 フレックがあきれたような顔をして僕の方を見つめる。 「フレック、ロイドはそういう事にあまり興味がないみたいなんだ」「ロイドらしいと言えばいいのか、なんといえばいいのか……」「でもさ、優秀な家の子だってことはわかるけど、どうして僕なんだろ?」「「え?」」 二人共に、僕の言葉に驚く。
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第5話 大事なのは
   アルスター家からの手紙が来てから、既に20日が過ぎていた。   あの後は父さんと母さんとフレックが話し合った結果、僕とアスティ嬢を会わせてみるという事で結論が出たみたい。  その返事をしたのが次の日なので、どんなに早くたどり着く方法を取ったとしても、返事がまた来るまでさらにひと月はかかると思う。  因みにひと月というのは30日間の事で、それが12カ月有り、360日で1年間とドラバニア王国では定められている。  アルスター家の有る領地はアイザック家とは正反対にあるので、かなり時間がかかるのは知っている。でもそれは馬車や徒歩で移動した場合の事で、使者へと返事を渡すと一緒に来ていたもう一人の人が馬へと乗って颯爽と走り去っていたと聞いたから、早馬を乗り継いで行くのだろうと思う。そうなると少しだけ期間は短くなるけど、それでもやっぱり時間はかかる。 ――使者の人って大変だよね。馬に乗って走って行った人って、しっかりと休憩は取るのかな? まさかそのまま走りっぱなし、乗りっぱなしなんて事は無いよね?  自室の机の前に座り、そんな事をぼんやりと考えながら、フレックとお勉強に精を出していた。  手紙を持ってきた使者は、乗ってきたであろう馬車に乗って街の中へと戻って行くから、そのままアルスター領まで戻ったのかは分からない。もしかしたら街の中で宿屋に泊まって伝令の人が戻ってくるのを待っている事も考えられる。  因みにアイザック家が収めている土地は、隣にはさらに大きな領地を持つマリアス辺境伯領が有って、王都まで行くには大小少なくない貴族領地を通らないといけない。そうなると時間は掛かるし、もちろんただでとおるという事もできないからお金もかかる。 ――そうなるとやっぱり、ウチの領地で待ってるのがイイのかもね。
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第6話 くたくたになる日
      お茶を飲みながらソフィアと他愛もない話をしたり、ソフィアの話に耳を傾け、テッサと一緒に笑いあったりと楽しい時間を過ごしていると、屋敷の玄関の方向から何やら騒がしい物音が聞こえ始める。 「なんだろう」「何でしょうね?」「だれかきた?」 僕が音のする方向を見ながらそうこぼすと、2人も同じ方へ視線を向けながら、それぞれ思った事が口から洩れる。 バタバタ!!どたどた!!  凄い音も聞こえてくるようになったし、これは何かあったに違いないと、テッサに見にいってもらう事にした。 そのテッサが屋敷の方へと歩いていく中、僕は不安そうな表情をしているフィリアの頭をなでなでしてあげた。 いつものフィリアならこれだけでも落ち着いてくれる。ただ、フィリアはフィリア自身が本当に好きな人でないと触るどころか、側に寄る事も許さない程人見知りをする事が有る。  そんな時はいつも僕の側に来てくれるので、そこがまた可愛いと思ってしまったりもする。  屋敷に戻っていたテッサもちょっと焦っているような表情をして、僕とリフィアのいる場所へと小走りで戻ってきた。 「ロイド様」「あ、テッサ。……何かあったの?」「実はですね……」「うん」 そこで一旦話を切るテッサ。そして少しだけ息を吸い込む。  「アルスター伯爵家の方々が、既にアイザック領へと入られたと報告が来たそうです」「は? え? もう……来たって事?」「そうですね」「え? でもまだ20日位しか経ってないけど……」「その辺はちょっと分かりませんが、領内に入っている事は確かなようです
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第7話 到着
     その日はベッドにいるとすぐに眠りに入る。初めて会うことになるアルスター伯爵様の事も気になるし、アスティという娘がどんな子なのかもにはなるけど、緊張するという暇もなく、気が付いたら既に朝を変えていた。 ――僕の緊張感ってどうなってるんだろうか? 朝、コルマによる会談の準備のための服装に着替えている間も、そんな事を考えてしまう程、僕はあまりこんな日が来るという事をまだ信じられずにいた。  アイザック家恒例の一家そろっての朝食も、なんだかピリッとした空気の中で食べたので美味しかったのかどうか良く分からない。  それでも父さんと母さんは、緊張していると思っている僕の事を気にかけてくれる。でも本当は僕以上に父さんと母さんが緊張しているのを僕は知っていた。 ――だって声が震えているんだもん。 話をする度にその事が分ってしまうから、僕は表情には出さないように気を付けていたけど、心の中ではおかしくてつい笑ってしまった。    そしてついにその時が訪れる。  訪れる時間前に屋敷の玄関へ集合して、皆でその時が来るのを待つ。  いくら来る事がわかっているとはいえ、父さんと母さんはそわそわしているのが分かってしまう。その逆にフィリアは大物感漂わせて、大あくびをしていた。 そんなソフィアの姿を見て、僕も少しばかり緊張感が取れた。 ――ありがとうフィリア。 フィリアの方を見ながらニコッと笑顔を見せつつ心の中でだけお礼を言っておく。僕のその様子に気が付いたフィリアが僕の方を見上げながら首を傾げている。 その様子がまた可愛くて和んでしまう。  
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第8話 でしゅ
    男の人の後ろへと隠れてしまった女の子。  その様子を、ため息をつきながらもどこか温かい目で見つめる様子を見て、僕はこの人達もとても仲がいい家族なんだと思った。  首位の様子を伺いようやく少し落ち着いたのか、三人揃って僕たちの方へと近付いてくる。それを一歩前に出た父さんが迎えた。 「良くいらっしゃいました。ようこそアイザック領へ。このような遠いところまで来ていただき感謝いたします。アルスター伯爵様」「こちらこそ。お出迎えありがとう、突然の訪問になってしまい申し訳ない」 と、お互いに挨拶が続き、アルスター伯爵から手が差し出され、それを父さんが握り返すことで簡易的ではあるけど、お出迎えの挨拶は上手くいった。  「このようなところでは何ですから、皆さんで中へお入りください」「ありがとう。では失礼させてもらうよ」 父さんにアがされて、アルスター伯爵様を先頭に屋敷の中へと入っていく。 その後を苦たち家族が続くのだけど、先ほどからアスティと呼ばれていた女の子が、僕質の方へチラチラと視線を向けてくる。 ――何だろう? 何か変なところあるかな? 視線に気が付いた僕は慌てて服装を見直した。 クスッ そんな僕の様子を見た女の子がちょっとだけ笑ってくれた。 ――あ、笑ってくれた。 笑われてしまったけど、さっきまで不安そうな表情をしていた女の子が自然に笑ってくれたことが凄く嬉しかったし、安心も出来た。   そのまま皆が座れるダイニングへと移動すると、いつも僕らが座る所に父さんと母さんが並ぶ。僕は眠そうな顔をしたフィリアを何とか引っ張る様に立たせたまま、その横へとならんだ。
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第9話 うわぁ……
     「噂と少し違うようだな。アイザック家の子供たちは」 お酒も進んで、お互いに話が弾みだしたころ、突然伯爵様がそんな事を言い出す。 「どんな噂ですか?」「ふむ。私も聞いただけなのだが、何でも息子はとても平凡だと――」「あなた!!」「む!?」 父さんの問いかけに、聞いた話だと前置きしてから話しだした伯爵様を、お妃様がものすごい速さでその先を言わせない様にと口を挟む。  「これは失礼した。マクサス殿、ロイド君すまない」 お妃様にとがめられ、僕らの方へと頭を垂れる伯爵様。 「いえいえいえ!! 頭を上げてください!!」 それにとても驚いたのは父さん。そして母さんも僕も驚く。  貴族が、しかもその家のご当主が格下の貴族に対して何のためらいもなく、自分の非を認めて頭を下げるという事はまずない。  しかし、眼も前でそれが起こってしまったのだから、僕達が驚いてしまうのも無理はないと思う。 「アルスター伯爵様がお聞きになっている噂というモノを、私達も耳にしたことがございます。そういう噂が広まっているのも存じていますので、どうぞお気になさらないでいただきたい」「マクサス殿にそう言われてしまうと……。分かった。この話はここではもうしない様にしよう」「ありがとうございます」 父さんがあまを下げるのと一緒に、僕らも頭を下げた。  ちょっと空気が重くなり始めたのだけれど、なんとかその場は持ちこたえることが出来て、またまったく違う内容の世間話などで場の流れを変えていく。  しばらくはそのままの時間が過ぎて、食事も既に
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第10話 ずっと一緒に居てあげる
     噴水が有る場所を中心として小さな四阿がこしらえてあるので、そこへとアスティを案内しつつ、アスティの様子をうかがう。 ――だいぶ落ち着いてくれたかな? 落ち着いてくれてるといいな……。  「アスティ様座りましょうか」「は、はい……」 さっとポケットからハンカチを取り出して、アスティの近くにある椅子の上へと掛ける。 「あ、ありがとうございます。ロイド様」「ううん。汚れてしまうともったいないでしょ。とても似合っているドレスなんだし」「似合って……ますか?」 派手さは無いものの、アスティの髪色に併せたのか、薄水色のワンピース型のドレスにところどころレースがあしらわれていて、可愛らしい見た目のアスティにとてもよく似合っていた。 「はい。とてもよくお似合いだと思います」「そ、そうですか。ありがとうごじゃいましゅ」 今度は照れてしまって噛んだみたいだ。ちょっとアスティが落ち着くまで、そのまま噴水から聞こえてくる水しぶきの音と、花の香りを感じて待った。  「ロイド様」「落ち着きましたか?」 しばらく眺めていると、アスティの方から声を掛けられた。 「はい」「それは良かった」「あの……ロイド様……」「何でしょうか?」 小さな声で僕へと話しかけるアスティ。  「その……。ロイド様は私と同じ歳だと聞いております」「そうですね」「その&hell
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